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原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第二話 虚偽と暗黒の健康診断」

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原子力発電所で働いてエライ目にあった話

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原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第三話 吹雪と爺と陰謀と…」

原発で働きだして一週間、なんだかんだ仕事にも慣れてきた

原発への通勤は朝社長が運転する車に乗り合わせ原発への道中にある資材倉庫?に車を止め、そこから他の会社の人達とバスに同乗して原発内に入るという回りくどいものだったズイ

バスが原発へ入る際はゲートでチェックがあり、映画でよく見るような鏡を使ってバスの下部を点検したり、車内に警備員が乗り込んで来てIDカードの写真と顔を一人づつ照合するという厳重さ

これを朝の通勤ラッシュ時に毎日やるんだから原発の警備がいかに厳重かが分かるズイ

チェックが終わり、バスがゲートを抜けたあとは会社毎に割り当てられた詰所に集合、朝礼とラジオ体操をした後にそれぞれの現場(建屋)に移動するズイ

建屋に入る際ももちろんIDのチェック!

現場であるタービン建屋に入る際も工具などの持ち込み品は空港にあるような検査機に通し、ボディチェックもされるという徹底ぶり

当然携帯電話は持ち込めるはずもなく、現場監督クラスが支給されたピッチを持てるくらいだったズイ

建屋自体は非常に巨大で、内部には休憩所やトイレ等が完備されているので朝と昼飯後の再入場1日2回このチェックを受けるズイ

原発という施設ならテロ対策としてはこれくらい当然ともいえるズ

聞いた話ではバスが通っていたゲートなんかは放射線量計も兼ねているらしく

過去に一次作業者(放射線量管理区域での働く人)が現場にあった工具を盗んで帰ろうとした際に警報が鳴りお縄になったとか…

おまけに犯人が働いていた会社はその後二度と原発での仕事はできなくなったらしいズイ

そりゃあ「IDカード無くしたら○すって発言も分からんでもないズイ(分からない)

同じ現場で働くクレイジーな社員たちを紹介するぜ!

社長が経営する

「ブラック工業」

そこで働くクレイジーな社員をしておくズイ!

今後のキーマンになる人達なので覚えておいて欲しいズイ

「社長」

ブラック工業を経営する30代後半の社長、背は低く痩せているが掴み所がなく苦手なタイプ

社長ではあるものの現場でも仕事をする

口は悪く「IDカード無くしたら○す」発言からどんどん不信感が募る、この後さらに本性を晒す

社長の側近「フルアーマー親父」

社長と仲がよく昔から一緒に働いているらしい40代のオッサン、体格は大きく威圧感があるが面倒見は割と良い

スキルは高くいろんな技術を持っていて仕事のやり方等も教えてくれる今思えば社長のガス抜き的な役割もあったと思うズイ

特徴はあらゆる工具を体に纏っていたこと、ベルトやベストに工具を満載したその姿はまさにフルアーマー親父(以後FA親父)

足場作りの際によくロープを使ったりするんだけど、休憩時間にロープの結び方の一種として教えてもらったのが

俗に言う「首吊り結び」

笑いながら「昔教えたやつがこれで自○したっけな~と言っていて真偽は不明だがゾッとしたズイ…

渋い顔だが癖が凄い!マーク爺

おそらく50代、ロマンスグレーの髪に整った髯、体は年齢の割にガッシリしている傍目からはイケ親父

しかし喋ってみると癖が凄い!(喋るときに口元が五月蠅い感じといえば分かるかな?)

思ったことはズバズバ言ってしまうため年上という事もあってか長に嫌われている

愛車はボロボロのマークⅡ昔のタクシーみたいに白いシートカバーが着いてるのがアンバランスだったズイ

同い年のお調子者 クズオ

もう名前からして今後の活躍が約束されている同い年のお調子者

原発で働くのも初めてという似たような境遇と、その性格も相まって結構話をする事が多かったズイ

この後コイツのせいで散々な目にあってしまう…

新たな現場は暗闇の穴の中…

クレイジーな社員たちと働くこと一週間、それまでの配管交換・足場作成の仕事は終わりブラック工業は新たな現場を担当することになったズイ

その現場を簡単に説明すると…

まず、発電所というのは蒸気を使ってタービンを回すことで発電するズイ

この蒸気を作るために水に熱を加える、この熱源がガス・石油などの燃料であれば火力発電

原発では原子核分裂時の熱量を使って高圧の蒸気を発生させタービンを回す仕組みズイ

そして今回の現場はこの発生させた蒸気から水分を抜く設備のメンテナンスズ

設備と言っても巨大な直径4メートルほどの円筒状の中に水切り板という鉄板を無数に取り付け冷却し、その中に蒸気を通過させることで水分を抜くという仕組みズイ

仕事自体は水切り板の交換と内壁の錆び取り作業ズイ

ここで私は二週間ほど延々と外壁の錆をグラインダーで削り続ける作業をしていたズイ…

タイベックという不織布の防護服・マスクにゴーグル・革手袋のフル装備に加え、作業灯の熱によって毎日汗だく&鉄粉まみれだったズイ

今でも鉄が削れて焼けた匂いを嗅ぐとこの当時を思いしてしまうほど苦行だったズイ…

円筒の中は作業灯がなければ真っ暗だし、その形状から足場を作ったとはいえ姿勢の悪い中での作業…

まるでカイジの地下労働施設で働いてる気分だったズイ…

それでも働く以外に仕方なかったズイ、貯金もあった訳ではないしバイトしていたバーも辞めてたから…

ただ、この現場で唯一楽しかったのはすぐ近くに馬鹿でかいタービンがあってそれを俯瞰して見ることができた事ズイ

タービンのデカさのあまりメンテナンスで働いている人達が米粒のように思える景色はまるでジオラマを見ているような不思議な気分だったズイ

そんな日々を送る中、ある日社長から

「健康診断の書類が必要だから受けてこい」

という指示があったズイ

予約は既に入れてるらしく、私は仕事終わりに指定された病院で健康診断を受けたズイ

ここで取った行動が後々あんな事態に陥るとは知らずに…

健康診断と会社名

かくして健康診断を受けにいった私は病院で検査を受けた

つつがなく終わったものの、会計時にトラブルが起こったズイ

まず、健康診断の費用を求められたこと

アイエエエエ! 自腹!? 自腹ナンデ!?

ずいずい

社長に電話をし確認すると

「立て替えておけ、明日払う」

という謎の事態に…

結局やむを得ず支払いをしたものの更に困ったことが…

それは所属している会社名を教えてくれと言われたことズイ

正直まともな面接もしていなかった私はその時自分が働いているブラック工業の名前も知らなかったズイ

迷った挙げ句その事を受付の人に伝えると

原発の方でしたらIDカードに書いてませんか?

と教えてくれたので、IDカードを確認

そこには

「○○工業」

という記載が

そういえば現場で渡されて使っていたヘルメットも「○○工業」だったしこれがうちの社名だったのか!

ずいずい

と私は思ったズイ

結局その○○工業と受付の人に答え健康診断は終了

翌日社長から立て替えていたお金を返してもらいグラインダーで壁を削る日々は続いたズイ

(今思えばブラック工業の給与明細には社会保険等は一切なかったので、立て替えさせることで保険料にかかる経費を安くしようという意図だったのかな?)

ある日いきなり社長にぶちギレられ…

それからも毎日グラインダーで壁を削り続ける毎日慣れとは凄いもので今までろくに使ったことがなかったグラインダーもこの頃にはもはや体の一部、FA親父の指導も手伝ってか刃の交換も超スピード!

まさにグラインダーずいずいであったズイ!

そんなある日、定時近くになった頃に社長が穴蔵の中に入ってきたズイ

そしていきなり…

バーン!!!

いきなり工具で頭を殴られたズイ…

ヘルメットを被っていたとは不意討ちで殴られた頭の中はガンガン響くし、起こった事態が掴めなくてまさに混乱状態

ぶちギレ具合から何かヤラかしたんだろうというのは察したけど、怒号の中走馬灯のように過去を遡って検索しても心当たりがない…

少し落ち着いてきた社長に何の事かを聞いたけどこれもまた燃料に

時間にすれば数分だっただろうけど、体感的には永遠にも感じられた怒号と叱責…

結局分かってきたのは健康診断の際に受付に伝えた会社名の事だっズイ

現場のヘルメットやIDカードに記載されている「○○工業」の名前を出したことで問い合わせがきて社長は面倒なことになったんだとか

それなら初めから注意しとけよ!!

ずいずい

って話なんだけど、まぁそういう事態になってしまったものはどうしようもないわけで

かくして社長の逆鱗に触れてしまった私はその後社長にいびられ、肩身の狭い思いをしながら壁を削り続けることになったのであった

マーク爺が教えてくれた闇の仕組み

それからの日々は辛いものだったズイ…

社長からの当たりは強くなり、今まで通りの仕事をしていても詰められるようになっていったズ

側近のFA親父も雰囲気を察したのか、直接的ではないけど今までより距離を置かれたズイ

休憩も昼飯も同じ卓ではあるけど会話には入れず孤立したような雰囲気

そんな中気にかけてくれたのがマーク爺だったズイ

マーク爺もその物言いから社長から嫌われていたズイ

最近の社長からの当たりが気になったのかマーク爺は何があったのか聞いてきたズイ

私は健康診断での件を話したところマーク爺が原発作業員の闇の仕組みを教えてくれたズイ…


・原発定期点検工事というのは大規模なため電力会社単体では実施できない、そのため下請け企業等に協力を要請する(一次下請け)

・一次下請け会社は工程や部品の発注(大手メーカー)等の管理を行うが実際に現場で工事はしない

・結局更に下請けの工事会社に仕事を投げる(中堅企業・二次下請け)

・二次下請け会社といえど数千人は人手がかかる定期点検工事は賄いきれず更に下請けを雇う~

・結局四次・五次下請け辺りに地元の工業系会社が名を連ねることになり、私が持っていたIDカードに記載されている会社はこの辺りズイ


しかしここまで下請けになっても3ヶ月毎に節目を迎える定期点検工事の仕事量は安定している訳もなく、同じような会社が競争をしている事もあり固定人員を増やしたくなということに

そこで現れるのがブラック工業のような会社ズイ

この会社は「3カ月の点検の間だけ人員が欲しい」という○○工業に人員を工面する形ズイ

結果的に原発の中では○○工業所属という形になるけど、実態はブラック工業の社員ということズイ

おそらくこのブラック工業の存在は元請けの電力会社は周知していないと思うズイ(この仕組みについては見て見ぬ振りだろうが)

あくまで○○工業の一員として定期点検工事に参加している訳なので…

ブラック工業のような人員派遣型の会社をマーク爺や回りの人達は

「人夫出し」(にんふだし)

と呼んでいたズイ

原発地域等ではよくある経営方式らしく、若いうちから原発工事なので仕事を覚え、コネ・人脈を作った人達が独立して始める1つのゴール地点なんだそうな

そんなコネや付き合いが大事な人夫出し家業にとって今回の社名間違いは余計な手間・迷惑を掛けさせて面子を潰すような行動と捉えられんたんでしょう

しかし人夫出しまでいくと5次、6次下請の更に下っ端ということで散々ピンハネされた残りカス程度の賃金しか貰えないズイ

これに関しては東日本大震災の後の福島除染作業も同様の手口が横行していたんでないだろうか?

結局電力会社側は

「一人当たり○万円出してます!」

と主張するだけしておけばいいんだしね…

この話を聞いた当時20にもなってなかった私は社会の闇を見た気がしたズイ…

マーク爺は

「こんなところは若い者が働くような場所じゃねぇよ、とっとと辞めてまともな仕事を探しな」

と口をわちゃわちゃしながら言ってくれたが、実家を出てふらふらしていた私には貯金も無く、実家に帰る覚悟もできず迷いながらも働くしかなかったズイ

今となってはこうしてネタにできるけど、当時は自分には何にも無い」「もうまともに働ける人生はないんだ」なんて諦めたような考えだったズイ

ほんと未成年のクソガキがなにいってんだか、という感じズイ

確かに学ぶ事もあったけど、時間を無駄にしていたなぁ…

しかしそれでも壁を削る日々は続くのだった…

ブラック労働記原発編Season1

次回

ブラック!ご期待下さい!

第三話↓

原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第三話 吹雪と爺と陰謀と…」