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原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第五話 変わる世界」

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原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第四話 因果応報 クズオ逝く」

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目次ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ

淡い期待と不安

慰労会の翌日、波乱の3月も終わり4月になったズイ

この日は土曜日だったもののゴールデンウィークの調整のため仕事が入っていた

家を出る前から気がかりだったのはクズオの事…

昨日の夜は反省していたけどクズオの性格や今までの事から一切信用していなかったズイ

しかしクズオが約束通り「自分が嘘を吐いていた事」を社長に打ち明けなければ今後も私は辛い立場のまま…

これからもブラック工業で働いていくとするならば、重要なターニングポイントだが

最も信用できないクズオに託すしか術がないという事態…

紙切れのように薄い期待を持ちながら、家を出て原発までの乗り合わせの車を待ったズイ

潰えた期待…

乗り合いの場所で待っていた私はそわそわしていたズイ

原発の少し手前までブラック工業の社員が乗り合いで向かう車はFA親父が運転するハイエースだったズイ

助手席は社長の定位置で、私達下っ端は後部座席と暗黙の了解があったズイ

しばらくして現れたハイエース、しかし向かってくる車の助手席にはいつも居るはずの社長の姿がなかったズイ

社長は他の原発にも人を派遣していた事もあり、その調整や営業等で時々居ない日もあったズイ

今日は社長が居ない日か…落ち着いて仕事ができそうだ

そう思った

というのも、今まで散々社長に詰めらたせいか、社長に見らているだけで緊張と恐怖からか体が上手く動くかず凡ミスをする事が多かったズイ…

いわゆるPTSDなんだろうけど当時はそんな言葉も知らなかった私は

「社長が居ない日は落ち着いて仕事ができる」

ぐらいに思っていたズイ

しかし今回はクズオの件もある、社長がクズオから話を聞いたのだとすればその結果が気になる

そんなジレンマの中、拾いにきたハイエースの扉を開けたその時…

やられた…あの野郎…!

私より手前で乗っているはずのクズオの姿がそこにはなかったズイ…

逃げやがった…

もはや怒りを通りすぎて呆れてしまった、唯一の挽回のチャンスも泡と消え、呆然とするしかなかったズイ…

結局その日は社長とクズオが居ない中、4月からの新しい現場への資材の運搬の仕事をする事になったズ

社長が居ない事もあり落ち着いて仕事ができたものの、この先の事を考えると暗い気分になってしまう…

必死に働くことで深く考えないようにしたズイ…

怒りと葛藤

休みを挟んで月曜日、クズオが逃げた事でこの先どうやってブラック工業でやっていけばいいのか…

憂鬱な気分の中、乗り合いの車を待ったズイ…

しばらくしていつも通りの時間に現れたハイエースの助手席には社長の姿が見えたズイ

今日は社長がいるのか…

クズオの件が流れてしまった以上、社長の態度が変わることは期待できない…

気持ちは更に落ち込んだズイ…

もう地道にひたすら働いて挽回するしかない…

そんなことを思いながら車に乗った、しかしそこには…

逃げたと思っていたクズオが乗っていた!

一瞬取り乱しそうになったが、よく見るとクズオの様子がおかしい事に気付いたズイ

口元は切れて、頬にはアザが…

他にもクズオはニット帽を被っていたが、今まで被っているのを見たことがなかったズイ

クズオは私と目が合うなり聞こえないような小声で

「ゴメン…」

と言った

この言葉がどちらの意味を指しているのか分からなかったが、おおよその出来事を察した私は社長が居る車内でクズオと話すことはしなかったズイ

現場に着いても相変わらずクズオは口を開くことはなく、必死の様相で働いていた

そんなクズオに対して社長は事あるごとに難癖を付け責めていたズイ…

あれだけの失態をしたのだから、この仕打ちを受けるだろう事は予想していたけど…

クズオが私にやったことを考えればこれくらいの目に遭うのは当然

でも自分自身も同じように詰められたからこそどれだけ辛いかも分かるズイ…

そんな葛藤の中で昼休憩を迎えたズイ…

昼飯の時もクズオは社長が居ることに気を使ってか喋ることはなかったズイ

そんな中で社長は珍しく私に話かけてきた

慰労会での件や今回の現場での役割等、その態度は以前に比べ柔らかかったズイ

この対応の変化はクズオの自供によるものなのか、それとも慰労会での評価が良かったのか…

その答えは分かるはずもなく、相変わらず社長の目を見るたびに萎縮していく中、精一杯話を合わせたズイ

社長との話もなんとか終わり、トイレにでも行こうかと食堂を出た

なんだか社長機嫌良かったな~

少し気分も晴れ、心なしか軽い足取り歩く私に後ろから話し掛けてきた男がいたズ

それはクズオだった

私が食堂を出たのを追って来ていたクズオは話があると言い、人通りの多い通路ではなく外に出ることに

(まさか復讐でもされるのか…!?)

一抹の不安を抱えながらも人気の少ない場所まで歩いたズイ

4月になったとはいえ外はまだまだ寒かった、人気のない建物の裏で足を止めた私たち…

しかしクズオは話を切り出しにくいのか、なかなか口を開かない

ようやく意を決したのかクズオは

「土曜日に社長に全部話してきた」

と言ったズイ

予想外の発言に驚く私にクズオは更に喋り続けた…

・慰労会の翌日、朝から社長が家の前まで来ていた事…

・慰労会での失態を詰められ殴られた事…

・○○工業の社長に謝りに行った事…

・社長と二人で謝罪をしに行った帰りの車内でも散々怒られ、仕事もこの工事の後は雇わないと言われた事…

・そして、そこまで怒られた後に今まで吐いていた嘘も打ち明けた事…

クズオの声は微かに震えていて、目には涙が溜まっていたズイ

一通り話し終えたクズオは被っていたニット帽を脱いだ…

クズオは頭を丸めていた…

社長への謝罪の意味合いもあったんだろうけど、それまで茶髪の長髪だったクズオがそこまでしていることに驚いたズイ

そしてクズオは大きな声で

「本当にごめんなさい」

頭を深く下げて私に謝ったズイ…

クズオの嘘で散々な目に遭い、絶対に赦さないと思っていた…

だけど

社長の仕打ちを受けたことがある私だからこそ

クズオがあの日どれだけ辛い目に遭ったのかも想像できた

もし自分が同じ立場だったら

散々怒られた後に

「自分は今まで嘘を吐いていた」

なんて事を言えるんだろうか…?

今回の定期工事もあと一月、次の工事に呼ばれないのなら隠したまま逃げきれたかもしれないのに…

殴られ顔にはアザができ、次の仕事も無くなり、頭を丸め、この先1ヶ月どれだけ辛い目に遭うかは想像できた…

全て自業自得…

それでもこうして涙ながらに頭を下げるクズオを、私はこれ以上恨む事はできなかった…

頭を上げようとしないクズオに私は

「もういいから、許すから…」

そう言った…

何故だか解らないけど、私も泣きそうだった…

なんでこんなに苦しい目に遭わなければいけないのか…?

そんな疑問が一瞬頭をよぎったが、深く考える余裕なんてなかった…

変わる世界

昼休憩も終わりに近づき、私とクズオは現場に戻ったズイ

道中クズオは

「これから辛い目に遭うのはわかってる、でもこの工事だけはケジメとしてとやり終える」

と言っていたズイ

それは社長との約束であり、私に対してのケジメでもあると言った

それから私とクズオはお互い必死に働いた

競い合うように我先に仕事をし、時に協力しながら残り一月となった工事をやり抜いた

社長の私への態度は大きく変わり、以前のように仕事のやり方やこの業界での常識などを厳しいながらも教えてくれたズイ

散々な目にあった3月の事を思えば、この最後の1ヶ月は必死ながらも穏やかな一月だったズイ

そして4月も末、人生で最も辛く濃密だった定期点検工事は終わりを迎えたズイ

最終日は仕事が終わると元請けである○○工業の事務所に全員で挨拶に行き、無事全工程を終えた

その後月末ということで3月分の給料を社長から手渡しされたズ

ブラック工業での初めての給与で、現金払いの封筒にはメモ書きのような明細が有ったが

社会保険や税金の記載はなく

働いた日数×8000円

という簡素なものだったズイ…

いままでバイトぐらいしか経験がなく、まともな明細見たことが無かった私は疑問を持つことも無かったズイ…

かくしてブラック工業は次の定期点検工事が始まるまで長いゴールデンウィークに入るのだった

ブラック労働記 原発編 Season1

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