←第四話原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第四話 因果応報 クズオ逝く」
第6話→原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第六話 狂気のイカサマ麻雀」
淡い期待と不安
慰労会の翌日、波乱の3月も終わり4月になったズイ
この日は土曜日だったもののゴールデンウィークの調整のため仕事
家を出る前から気がかりだったのはクズオの事…
昨日の夜は反省していたけどクズオの性格や今までの事から一切信
しかしクズオが約束通り「自分が嘘を吐いていた事」
これからもブラック工業で働いていくとするならば、
最も信用できないクズオに託すしか術がないという事態…
紙切れのように薄い期待を持ちながら、
潰えた期待…
乗り合いの場所で待っていた私はそわそわしていたズイ
原発の少し手前までブラック工業の社員が乗り合いで向かう車はF
助手席は社長の定位置で、
しばらくして現れたハイエース、
社長は他の原発にも人を派遣していた事もあり、
今日は社長が居ない日か…落ち着いて仕事ができそうだ
そう思った
というのも、今まで散々社長に詰めらたせいか、
いわゆるPTSDなんだろうけど当時はそんな言葉も知らなかった
「社長が居ない日は落ち着いて仕事ができる」
ぐらいに思っていたズイ
しかし今回はクズオの件もある、
そんなジレンマの中、拾いにきたハイエースの扉を開けたその時…
やられた…あの野郎…!
私より手前で乗っているはずのクズオの姿がそこにはなかったズ
逃げやがった…
もはや怒りを通りすぎて呆れてしまった、
結局その日は社長とクズオが居ない中、
社長が居ない事もあり落ち着いて仕事ができたものの、
必死に働くことで深く考えないようにしたズイ…
怒りと葛藤
休みを挟んで月曜日、
憂鬱な気分の中、乗り合いの車を待ったズイ…
しばらくしていつも通りの時間に現れたハイエースの助手席には社
今日は社長がいるのか…
クズオの件が流れてしまった以上、
気持ちは更に落ち込んだズイ…
もう地道にひたすら働いて挽回するしかない…
そんなことを思いながら車に乗った、しかしそこには…
逃げたと思っていたクズオが乗っていた!
一瞬取り乱しそうになったが、
口元は切れて、頬にはアザが…
他にもクズオはニット帽を被っていたが、
クズオは私と目が合うなり聞こえないような小声で
「ゴメン…」
と言った
この言葉がどちらの意味を指しているのか分からなかったが、
現場に着いても相変わらずクズオは口を開くことはなく、
そんなクズオに対して社長は事あるごとに難癖を付け責めていたズ
あれだけの失態をしたのだから、
クズオが私にやったことを考えればこれくらいの目に遭うのは当然
でも自分自身も同じように詰められたからこそどれだけ辛いかも分
そんな葛藤の中で昼休憩を迎えたズイ…
昼飯の時もクズオは社長が居ることに気を使ってか喋ることはなか
そんな中で社長は珍しく私に話かけてきた
慰労会での件や今回の現場での役割等、
この対応の変化はクズオの自供によるものなのか、
その答えは分かるはずもなく、
社長との話もなんとか終わり、トイレにでも行こうかと食堂を出た
なんだか社長機嫌良かったな~
少し気分も晴れ、
それはクズオだった
私が食堂を出たのを追って来ていたクズオは話があると言い、
(まさか復讐でもされるのか…!?)
一抹の不安を抱えながらも人気の少ない場所まで歩いたズイ
4月になったとはいえ外はまだまだ寒かった、人気のない建物の裏で足を止めた私たち…
しかしクズオは話を切り出しにくいのか、なかなか口を開かない
ようやく意を決したのかクズオは
「土曜日に社長に全部話してきた」
と言ったズイ
予想外の発言に驚く私にクズオは更に喋り続けた…
・慰労会の翌日、朝から社長が家の前まで来ていた事…
・慰労会での失態を詰められ殴られた事…
・○○工業の社長に謝りに行った事…
・社長と二人で謝罪をしに行った帰りの車内でも散々怒られ、
・そして、
クズオの声は微かに震えていて、目には涙が溜まっていたズイ
一通り話し終えたクズオは被っていたニット帽を脱いだ…
クズオは頭を丸めていた…
社長への謝罪の意味合いもあったんだろうけど、
そしてクズオは大きな声で
「本当にごめんなさい」
頭を深く下げて私に謝ったズイ…
クズオの嘘で散々な目に遭い、絶対に赦さないと思っていた…
だけど
社長の仕打ちを受けたことがある私だからこそ
クズオがあの日どれだけ辛い目に遭ったのかも想像できた…
もし自分が同じ立場だったら
散々怒られた後に
「自分は今まで嘘を吐いていた」
なんて事を言えるんだろうか…?
今回の定期工事もあと一月、
殴られ顔にはアザができ、次の仕事も無くなり、頭を丸め、
全て自業自得…
それでもこうして涙ながらに頭を下げるクズオを、
頭を上げようとしないクズオに私は
「もういいから、許すから…」
そう言った…
何故だか解らないけど、私も泣きそうだった…
なんでこんなに苦しい目に遭わなければいけないのか…?
そんな疑問が一瞬頭をよぎったが、
変わる世界
昼休憩も終わりに近づき、私とクズオは現場に戻ったズイ
道中クズオは
「これから辛い目に遭うのはわかってる、
と言っていたズイ
それは社長との約束であり、私に対してのケジメでもあると言った
それから私とクズオはお互い必死に働いた
競い合うように我先に仕事をし、
社長の私への態度は大きく変わり、
散々な目にあった3月の事を思えば、
そして4月も末、
最終日は仕事が終わると元請けである○○
その後月末ということで3月分の給料を社長から手渡しされたズ
ブラック工業での初めての給与で、
社会保険や税金の記載はなく
働いた日数×8000円
という簡素なものだったズイ…
いままでバイトぐらいしか経験がなく、
かくしてブラック工業は次の定期点検工事が始まるまで長いゴール
ブラック労働記 原発編 Season1
次回
ブラック!ご期待ください!
第6話→