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目次ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイ
久し振りの休息
ブラック工業での定期点検工事の仕事も終わり、休みに入った
ゴールデンウイークの時期ともかぶっていたが、次の工事がいつから始まるのか分からないまま長期の休みになった私は久しぶりに体を休めることができたズイ
そんな中に社長に呼び出され、何ごとか!?と思ったが社長宅の倉庫の整理を手伝わされるという強制労働イベントだったズイ…
面倒だけどこれも仕事と割り切りキリキリ働いたズイ
作業も終わり帰りがけに社長から次回の定期点検工事が6月から始まること、それまでの間は街での仕事もあるからまた連絡すると言われたズイ
(余談だけど倉庫整理の際に昔社長が使っていた作業着を貰ったズイ、なぜか今でも押し入れに入っていて車の整備や汚れる仕事の際にはたまに着たりしているズイ)
気が付けば5月、世間はゴールデンウイークに入り、連絡すると言われたものの電話が鳴ることはなかったズイ…
ダラダラと過ごす日々
5月中はいつ仕事が入るかわからないということもあり、遠出することもできず…
学校の友人に会おうかと久しぶりに電話をしたが…
昔同じ部活だった子が定期点検工事の大元である電力会社に内定が決まった事を聞き自分とのあまりの差に絶望したズイ…
まさに天と地の差…学校の友人たちと会わせる顔も、その覚悟もなく私は完全に腐ってしまった…
毎日何をするでもなく以前のようにパチンコで小金を稼いだり、前まで働いていたバーに顔を出したりとダラダラと時間だけが過ぎていったズイ
給料が入ったといっても日給8000円だったため余裕もなく、またブラック工業の給料日は月末締めの月末払い…
3月から働き始めた私は5月の中頃になるというのに1ヵ月分のわずかな給料しか貰えていなかったのだ…
そんな中、ある日電話が鳴った
社長からの仕事の話かと思い画面を見ると発信者は工事が終わって以来会っていなかったクズオだったズイ
クズオの電話、意外な誘い
私とクズオは謝罪された後、共に工事を働きぬく間に仲が良くなっていたズイ
お互い辛い思いをしたことや、そこから必死で仕事をしあったためか話をすることも多かったズイ
クズオは社長に言われた通り次回の定期点検工事には呼ばれない事になり、実質ブラック工業をクビになっていたズイ
そんなクズオからの電話の内容は
「以前のお詫びに奢るから飲みに行こう!」
というものだったズイ
私も特に用事もなく、暇を持て余していたため誘いを受けたズイ
現場だと常に周りを気にしながら話さなければならなかったし、同い年のクズオとは一度普通に話してみたいとも思ったズイ
学校の友人に会いたくないし、お金が心もとない私にとって奢りというのは魅力的だったズイ
元気そうなクズオ、とある情報
待ち合わせ先の居酒屋で久しぶりに再会したクズオは元気そうだったズイ
ブラック工業をクビになったものの別の会社に雇ってもらったらしく、日々働いているようだった
クズオの新しい職場は社長は厳しいものの、しっかり仕事を教えてくれたり他の人の関係も良好そうだったズイ
「ブラック工業でいろいろ勉強になったから…」
クズオは苦笑いを浮かべながらしみじみそう言っていたズイ
何度も嘘を吐いた件を謝られたけど
「もう終わった事、職場じゃないんだしせっかくだから飲もう」
そう言って私とクズオは酒を飲み、同い年らしく馬鹿な話で盛り上がったズイ
相変わらずクズオは酒が入ると五月蠅かったが
「大丈夫!慰労会の件で自分の限界は分かったから!!」
なんて言いながら酒を飲んでいたズイ
思えばブラック工業で働き出してからは、こんな風に気兼ねなく酒を飲んで誰かと話すことも無かった私
「あの店員の女の子可愛い!!」
なんて言いながら注文の度にしつこく絡むクズオに少し呆れながらも、私は内心楽しんでいた私はクズと一緒に酒を飲むのだった
お互いかなり酒も回ってきたころクズオは思い出したようにある話をし始めたズイ
それは
「最近よくFA親父に麻雀を誘われる」
というものだったズイ
この期に及んで仕事の話なんてしたくなかった私は話を変えたかったが、クズオが麻雀で結構負けたという話を聞きながら酒を飲んでいたズイ
調子に乗る性格や、お世辞にも頭がいいとは言えないクズオが麻雀で負けるのは必然だろうと思ったが可哀そうなので口に出すことはなかったズイ
そんなこんなでその後も取り留めない話で盛り上がった私たち、気づけば日付も変わる頃だったので解散する事に
もちろん会計はクズオの奢り、腹が立つことに会計の時にレジいたのは例の可愛い店員だったズイ
会計を終えたクズオは満面の笑みで女の子のアドレスをゲットしたことをアピールしてきたズイ
「クソがっ!」
やっぱりあの時ボコボコにしとけばよかったわ
そんな事を思いつつ、久しぶりの酒と気兼ねのいらない会話で私の枯れていた心は満たされた気分だったズイ
誘われた麻雀
その後も社長から仕事の電話がかかってくることはなかったズイ
相変わらず暇な日常だったがお金だけは徐々に減っていった…
そんなある日FA親父から電話がかかってきたズイ
電話の内容は
「仕事無くて俺も暇やから麻雀でもせえへんか?」
というものだったズイ
そういえばクズオが麻雀に誘われた話を思い出したズイ
私はバーでバイトしていた際に店長が麻雀好きだったこともあり、数合わせで入れるように麻雀を教えてもらっていたズイ
といってもほとんど素人に毛が生えたようなもの、それでも店長が初心者の客をうまく乗せて麻雀をしていたものだからそれなりには勝てた経験もあったズイ
どうせすることもないし、勝てれば生活費の足しになる
そう思ってFA親父の誘いを受けたのだった…
消えゆく生活費と矛盾
夜になってFA親父の家に麻雀をしに行った私
お金に余裕のない私にとって場代がかかる雀荘でないのはありがたかった
FA親父の家はかなり散らかっていた、五月の中というのにまだコタツがありすぐ横には扇風機があった
使わない工具でも何かのためにと身に着けていたFA親父らしいといえばらしいが…
そんな家の中で始まる麻雀
面子は私とFA親父、それとあと一人はFA親父の知り合いで別の現場で働く同い年くらいの男だったズイ
この男の名を「矢木」としておくズイ
・ルールはいわゆるサンマー(3人麻雀)で半荘戦
・持ち点は25000点の35000返し
・焼き鳥・飛び・役満祝儀・1位3位のウマで各15000点
・1発・裏ドラは別途チップ有り
・喰いタン無し、萬子は1・9牌以外なし
・全員のオタ風となる「北」はドラ扱い(手牌に入ると晒して嶺上から1枚入れ替える)
・更に花牌・赤ドラも有り
という基本でもドラが16枚というルールだったズイ
以前バーでやっていた頃も同じようなルールだったので苦労はしなかったが、ルール的には早上がりでもドラで点が大きくなること、リーチからのチップ狙いなど作戦は色々
持ち点と打点の都合上早い段階で飛んでしまうと焼き鳥・飛び・ウマだけで45000点のマイナスになるのでかなり荒れるルールズイ
レートは1000点10円、低いと思われるが上記の45000点だけでも450円のマイナス
お金に余裕のない私にとってかなり厳しいレートズイ…
この辺のルールなんかは矢木が説明していたズイ
そしてここでFA親父が気なること言いだしたズイ…
それは
「俺、矢木に誘われたんやけどちょっと教わっただけで実際麻雀するん初めてやねん」
ん?この前クズオとやってたんじゃ…?
話半分に聞いていたせいか詳しいことは思い出せないが違和感を感じたズイ…
しかし手積みで山を作るFA親父の手つきは初心者そのもの、麻雀中も分からないことは手を明かさない上で矢木に聞きながらゲームを進めるというおぼつかなさ…
これは勝てる…
内心そう思った私は早上がりを目指す形で打っていった
しかし、時々上がれるものの初心者のFA親父が矢木に一発で振り込むことが多くトップはなかなか取れなったズイ…
FA親父も慣れてきたのか徐々に聴牌も速くなり、ドラの多いルールからトップを取ることも増えてきた
日付が変わるころには私が聴牌するまでに二人が上がることが増えた…
振り込みはしないものの、ツモや二人の間での飛びに巻き込まれ焼き鳥でマイナスなど歯がゆい局が続く…
結局朝方まで続いた麻雀で私は1万円ほどのマイナスを出してしまうのだった…
FA親父は
「麻雀だいぶ分かってきたけど面白いわ、またやろな!」
と言ってきたズイ
私は今日はツキが無かったんだろうと思い、マイナス分を取り返すためにも次回も麻雀をすることにしたズイ
違和感、気づき…
翌日からは負け分を取り戻すために本屋で麻雀の教本や漫画なんかを立ち読みしに行ったズイ
しっかし麻雀の本を読んでも4人麻雀のものばかり、あんなドラだらけの3人麻雀のあてになるものはなかったズイ
結局アカギの漫画を読んだりしていたけど、そこで気になることを見つけたズイ
それは通しというイカサマだった
作中では4人麻雀で3人がグルになり、自分の上がり牌を会話の中で暗号のように伝えるというもの
少し気にはなったが流石にこれはないだろうと思ったズイ
三人麻雀でこのイカサマをするには2人で頻繁に会話する必要があるし、そこまで気になるようなことも無かった
結局そういうのもあるのか、というぐらいで本屋を後にしたズイ
そしてFA親父たちと2度目の麻雀
今回はそこそこツキも良くプラス圏内、相変わらず日付を超えても麻雀は続いたズイ
漫画で見たイカサマも注意して観察したが特に怪しいこともないし…
5月も半ばだが夜中は流石に肌寒く、コタツを付けながら夜食を食べて麻雀を続けた
そんな中少し違和感があったズイ
それは麻雀中FA親父と矢木の腕がコタツの布団の下で少し動いているように見えたことズイ…
まさかコタツの下で何かサインを出してる…?
クズオの件も思い出して不信感は増していったズイ
夜中になって寒さは増し、コタツに手を入れるのも分かるけど…
結局その後は以前のように自分が上がる前に他の二人が先に上がっていく展開…
疑惑はあるが確認のしようがない…
確信…失望
そんな中閃いたことがあったズイ
それは携帯電話のビデオ機能ズイ
これでコタツの中で怪しい動きが無いか確認できるはず!
しかし当時使っていたガラケーでは無音カメラなどなく、録画時間も数分がいいところ…
そこで思いついた作戦が局の変わり目、洗牌の際にメールを確認するふりをして録画を開始する
これなら録画スタート時の音も牌の音で気にならない
そこからは録画時間が終了の音が鳴るまでに局が終わってくれれば誤魔化せる…
この作戦で録画をしたけど幸か不幸かそういう時に限って自分の手が良い…
結局早上がりをしては洗牌の際に停止・録画を繰り返したズイ
そして何度目かの録画の際にその時が訪れた…
FA親父が早い段階でリーチを掛け、布団の上からでも僅かに腕が動いたのを確認できたズイ
「あとは音が鳴ってばれる前に早いこと上がってくれれば…」
幸いその願いはすぐに叶った
FA親父のリーチに矢木が一発で振り込んだズイ!
点差は開いてしまったものの、これで確認が取れる!
そう思い洗牌の音に紛れて録画を停止、山を積み終わった後にトイレに行くといって録画を確認したズイ…
そしてそのビデオには…
コタツの中で手を使って上がり牌を伝えている様子が写っていた…
そうかそうか、君はそういうやつだったのか…
FA親父の事は今一つ掴みきれていなかったけど、仕事の事や社長にフォローしてくれた件もあってそれなりに信頼していたのに…
クズオの件で暇つぶしがてらに小銭をせしめようとしたのか、その真意は分からなかったがイカサマをされたという事実はだけは分かった
ただこのビデオを見せたところで多勢に無勢だし、面倒なことになるだけなのは目に見えていたズイ
結局この日も朝まで麻雀は続き、またしても負けてしまうのだった…
しかしイカサマをされてることは分かった、それなら…
特訓!そしてリベンジへ
まさか自分が実際にイカサマでカモにされるとはおもっていなかったズイ…
こんなのは漫画の世界だけと思っていたけどやられてしまったのは事実…
そのせいで私はお金を失い、この先の生活費すらも危うい状況に…
取り返そうにもまともにやっても勝てない…だったら…!
目には目を、イカサマにはイカサマを
私はネットで麻雀のイカサマをする方法を調べたズイ
そんな中見つけたのが今は亡き小島武夫先生の動画だった
さらにほかの動画も何度も見て使えそうなイカサマを練習したズイ
練習したのは主にブッコ抜きと積み込み
これなら一人でも太刀打ちできる
幸い仕事もなく練習する時間だけはいくらでもあったズイ
そんな中FA親父から性懲りもなく麻雀の誘いが来たのだった…
反撃開始!狂気のイカサマ麻雀
FA親父の家に向かった私の財布の中にはほとんどお金が無かったズイ…
今日は絶対に払わない、今までの分を回収する!
そう意気込み麻雀は始まった…
しかし実戦となると途端に緊張で指先が震えてしまう…
もしバレてしまったら向こうもイカサマをやっていたとはいえ無事では済まない…
負けたとはいえ数万円のお金のためにやるのはハイリスクローリターンズイ…
しかしそれでも勝たないとこの先食費はおろか光熱費・携帯代も払えなくなってしまうズイ
幸い朝まで続くだろうこの麻雀、時間を追うごとに緊張は解れ、比較的簡単な山の端からのブッコ抜きをやっていったズイ
このブッコ抜きは効果が大きい、なにせ不要な2牌を河に出すことなく処理出来て別の牌を入れることができる
これだけでもかなり聴牌速度が上がったが相手も通しをしている、ここはやはり積み込みでの役満が必要だったズイ
そして日付が変わったころ、幾度にもわたるブッコ抜きの成功で緊張もなくなった私は大三元爆弾を自分の山に積み込んだズイ
親番は私、ここで一番大事なのはサイコロの目…
三人麻雀で自分の山から配牌を始めるのは4の目が必須
賽の目なんて操れるはずもない私は「置き賽」というイカサマを使ったズイ
これは出したい賽の目を上向きに持って転がすふりをしてそのまま置くという技ズイ
幸い賽を振る際二人の視線は携帯やタバコに向いていたので難なく積み込んだ自分の山から配牌を始めることができたズイ
配牌をが終わった時点で私の手配は大三元が確定していたズイ
3人で山を作るため普通の積み込みよりも多く仕込めたお陰で既にイーシャンテン
ほどなく聴牌にこぎつけたがリーチなどせず、二人からのロンを待った…
そして数順後…矢木が出した牌はロン牌だった
「…」
「…ロン」
「アンタ、背中が煤けてるズイ」
(※あくまでもイメージです)
私の積み込み大三元は成功したズイ
半荘の初めの頃ということもあり矢木の飛び・二人の焼き鳥・役満祝儀で断トツのトップにたった
その後も役満まではいかないものの小規模の積み込みとブッコ抜きのイカサマによって朝までに2日分の負け額と同じぐらいまで勝つことができたズイ
「今までツキが無かったから反動なんですかね~?」
なんて誤魔化しつつ生活費を取り戻した私はその後麻雀の誘いを受けることはやめた
FA親父の家を後にして車に乗った時、今まで麻痺していた緊張が一気に押し寄せて足や指は震えていたズイ…
5月ももうすぐ終わる頃、結局社長からは仕事の電話が来ることはなかった…
次回
ブラック労働記 原発編 Season2
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