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原子力発電所で働いてエライ目にあった話「第八話 誤解と監視社会」

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新たな始まり

親方に全てを話した翌日、私は仕事に向かったズイ

やれるだけの事をやろう

そう心を決めて乗り合いの車を待った

しばらくして親方が運転する車が現れた、車に乗ろうとする私に親方は運転席の窓を開けてこっちに来いという仕草を見せたズイ

なんだろう?

少し戸惑ったが親方の方に向かった

親方は他の同乗者に聞こえないよう小声で

FA親父とか他の奴には昨日の件は黙っとかな面倒になるから気を付けろよ」

なるほど、同じブラック工業のFA親父は社長と長い付き合い…

他の××工業の人達に知られるのも色々面倒な事態になることも分かるズ

私は頷き、後部座席に乗った

同じく後部座席に乗っていたFA親父から

「昨日なんかあったん?」

と聞かれたが、体調が悪くて病院に行っていたと誤魔化したズイ

FA親父とはなるべく距離を置こう、そう思いながら現場へと向かった

親方の気遣い

原発に着き、仕事の前のミーティングの際に親方は現場の人員構成を変えると言い出したズイ

そしてそれは私への気遣いでもあったようで、私とFA親父は別の現場で働くことになったズイ

私は変わらず親方の下で働くことになった、現場に着いた時に親方が

これから先工事が終わるまではFA親父とは一緒にならへんように手配するから安心せえ」

と言ってくれたズイ

こうして私はブラック工業の社員ではあったものの、これから先××工業の人達と働くことになるのだった

更にありがたかったのが翌日から親方の嫁さんが私の分の弁当を作ってくれた事ズイ

生活費が心許ない私にとって昼飯代が浮くことは非常に助かったズ

毎日作ってくれた弁当はとても美味しかったズイ、実家を離れコンビニ弁当ばかり食べていた私はどこか懐かしくて暖かい味に感謝するばかりだった

せめてものお返しにと昼飯を食べた後は二人分の弁当箱を綺麗に洗い、周りの人達に気づかれないように親方に返すことが日課になってい

穏やかな日々、現れた異変…

気付けば親方の下で働くこと数週間、親方の好意に少しでも応えようと自分なりに必死で仕事をする毎日

しかしブラック工業で働いてたときのようなプレッシャーも無く、陽気な親方や周りの人達と楽しく働くことができたズイ

徐々に色んな仕事も覚え、現場も資材搬入の仕事から足場製作の現場へと移ったズイ

幸い足場の仕事はブラック工業での経験が有ったので要領は分かっていた

少しでも役に立てるように進んで手伝いや資材の運びを手伝い、親方の作業指示の効率の良さも相まって仕事はスムーズに進行していたズイ

しかしそんな中、私の体に異変が起こり始めた…

ある日鉄パイプを運んで階段を登ろうとした時に一瞬右膝にビリっとした痛みが走った

何事か!?と思ったがその場はすぐに痛みは消え、その日は特に痛みも再発しないまま仕事が終わったズイ

しかしその翌日から徐々に症状が悪化した…

数日後には何も持っていない状態でも階段を昇る度に痛みが走った

ここまで私に世話を焼いてくれている親方に少しでも恩を返したい

そんな想いの中でなんとか我慢しながら働いていたが症状は悪化するばかりだったズイ…

そんな私の様子に気付いたのか、親方はある日

「今日はもういいから病院行け」

と言ってくれたズイ…

この時の私は自分の情けなさ、不甲斐なさがただただ辛かった…

やっと仕事にも慣れて、親方の下でこれから頑張るんだ!と意気込んでいた矢先の事だったのだから

最後の意地とばかりにその日は定時まで働くと親方に告げ、痛みの中で無理矢理働いたズイ…

そして仕事が終わった後に私は病院に向かった

再発した症状、要安静

右膝の痛みに関しては実は心当たりがあったズイ

病院では触診とレントゲンによる診断を受けたが、原因はやはり思っていた通りだった

症状は「良性骨腫瘍」というものだった…

簡単に言えば膝の骨が通常より出っ張り、負荷を掛け続けた事によって周囲の筋肉や腱を痛めていたそうだっ

物心が付く頃からスポーツをしていた私は中学に上がる頃に一度同じ症状で膝を痛めた事があり、この時に同じ診断をされていたズイ

幸い良性だったので安静にして過度な負荷を掛けなければ問題は無いということで当時は落ち着いた

しかし今後もスポーツを続けたいなら手術で切除することも視野に入れた方が良いと言われていたズイ…

高校に入ってからは膝の件もあってスポーツを辞めていた私だったが、原発でのハードな仕事のせいでこの時になって再発してしまったのだ…

なんでこんな大事な時に…

そんな想いの中、医者は仕事を休んで安静にするようにと言った

結局湿布と痛み止めをもらい病院を出た私は迷った挙げ句親方に電話をしたズイ

話を聞いた親方は今週は休んでもいいから大丈夫そうだったら連絡をくれと言ったズイ

私は自分のあまりの不甲斐なさと、膝の痛みにただただ絶望するしかなかった…

友人

翌日から仕事を休むことになった私はほとんど無気力だったズイ

痛み止めをと湿布のお陰でなんとか普通に歩く分には問題無かったが、食べ物を買いに外に出る気すらせず…

ただ家の中で呆然と過ごしていたが、頭をよぎるのは親方への申し訳ない気持ちばかりだったズイ…

そんな日々を送る中、電話が鳴ったズイ

相手は学校の友人だった

あまり学校の友人と連絡は取りたくなかったのは本音だったけど、何もせずに過ごす日々と少しでも辛い気分をまぎらわせるならと電話に出たズイ

久しぶりに話す学校の友人との会話は私の心を癒してくれた

色々心配してくれた友人に私は自分の現状を少しだけ話したズイ

話を聞いた友人はとても心配してくれたのか、学校が終わったら家に行くと言ってきたズイ

今思えば人と話すことに飢えていたんだと思う、夕方訪れた友人との話しは弾んだ

久しぶりの友人の訪問は、腐りかけ無気力になりそうだった私の心を救ってくれたズ

久しぶりの外出

気付けば夜、訪れていた友人は

「飯食いに行こうや!」 

と言ってきたズイ

少し迷ったものの、ここ数日ろくに飯を食べてなかった私は、友人と久しぶりに外に出たのだった

友人は自分が普段バイトしているという焼き鳥屋に連れていってくれたズイ

お互い酒は飲まなかったが久しぶりのまともな食事と気兼ねなく話せる友人との会話で心は晴れていった

そんな中ふと店内を見渡すと何処かで見たような顔があった…

後ろ姿で今一つ分からなかったが、しばらくしてそれが××工業の人だと分かった

しかしこちらを向くこともなかったので食事を終えた私達は店を後にしたズイ

会計は心配してくれた友人が奢ってくれたズイ、毎日フルタイムで働いてる私が学生アルバイターに奢られるというのもおかしな話だけど金の無い私には有難たかった

家まで送ってくれた友人に感謝と別れを告げ、久しぶりに満たされた心のままその日は眠りについたズイ

この日の出来事があんな事になるとは知らず…

誤解と監視社会

診断を受けてから一週間が経っていなかった私は翌日も仕事には出なかったズイ

朝起きると痛み止めの効果が切れたのか、相変わらず顔を洗いに歩くのですら膝が少し痛む…

まだ時間がかかるのか…

友人のお陰で少し気は晴れたものの、相変わらず痛む膝に憂鬱としていたズイ

そしてまた何をするでもなく時間だけが過ぎ、時計は昼の12時を指した頃だったズイ…

電話が掛かってきた、相手は親方だった

ちょうど向こうは昼休憩の時間か、そんなことを思いながら電話に出た…



「おう!!よくもお前やってくれたな!!」

「俺の今までの数十年ぶち壊してどないしてくれんねん!!」

頭が真っ白になった…

電話に出るなり怒号が鳴り響いた、今まで怒るのを見た事がなかった親方が本気でキレているのが電話越しでも分かった

いきなりの事でパニックになる私になおも親方は怒鳴り続けた

何に怒っているかも分からず、頭は混乱するばかり…

私は恐る恐る何の話なのか質問したズイ…

すると親方は相変わらず怒りながら

「お前仕事サボって遊び回ってるらしいやんけ!!」

病気で仕事に出れへんって言うから上にも話し通してた俺の信用どうしてくれんねん!」

混乱する頭の中、ひとつの光景が思い浮かんだ

外食に行った際の××工業の社員の後ろ姿だった…

あの時の事を報告されたのか…

でもそれ以外は外には出ていないのに遊び回ってるというのは…

クズオの件を思い出した私は自分に今起こっている事を全て理解し

確かに不用意な外出だった、休んでいる自分がやってはいけない事だったと反省したズイ…

しかしそれ以上に話を盛られているのは間違い無いだろう…

そして自分のせいで親方にも迷惑をかけてしまった以上、自分の浅はかな行いへの謝罪と有りもしない誤解は解かないといけない

しかし電話越しの親方には何を言っても話しは通じなかった

普段温厚な人ほど怒ると手が付けられないというのはこういうことなんだろうか

私も徐々に大声で誤解である事を言ったが平行線のまま親方は話を打ち切ろうとしたズイ

「誤解は絶対解きます!!明日必ず解きます!!」

私は声を荒げて親方にそう言った、そして親方は

「この期に及んで嘘やったら許さんからな!!」

そう言って電話が切れた

身から出た錆びとはいえ、自分に降りかかった現状と話が通じない親方への気持ちは言い表せないものだった…

この誤解は必ず解く…!怒りにも似た感情の中、私はそう心に決めた

ブラック労働記 原発編 Season2

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